その他対策について
株式上場のメリットを教えてください。
事業承継の観点からは、株式上場による一番のメリットは多額のキャピタルゲインを獲得できるという点にあります。株式上場により株価は上昇するため、上場前の低廉な株価と上場後の高株価との差額をキャピタルゲインとして経営者又は後継者が獲得することができます。これにより、経営者は次世代に残す財産を増やすことができ、後継者は納税資金を確保できるというメリットがあります。その他にも、株式上場により会社の信用力が増す、多額の資金調達が可能となるといった一般的な上場メリットが考えられます。
株式上場のデメリットを教えてください。
株式上場により自社の株式は証券取引所で自由に売買され、不特定多数の株主が会社に流入してくることになります。このため、上場前のようにオーナー経営者が任意に会社を動かすということは難しくなると考えられます。また、株式上場により会社は公器となりますので、株主をはじめ外部の一般投資家等の衆人環視に晒されることになります。さらに、株式上場後は金融商品取引法、証券取引所の上場規程の規制を受ける事になり、これらの規制に耐えうる会社にするためには多額のコストが必要となります。その他にも、上場までに数年の期間を要する、上場後も上場維持のためのコストがかかるといったデメリットが考えられます。しかしながら、Q.12で回答した通り、株式上場には大きなメリットがあります。また、このようなデメリットも見方を変えて会社のステップアップと考えるならば、メリットと捉えることもできます。従って、事業承継という観点からだけでなく、上場のメリットデメリットを比較考量し自社の将来を見据えて、株式上場を検討すべきであると考えられます。
上場市場の種類を教えてください。
上場市場には東京、名古屋、福岡、札幌に証券取引市場があり、それぞれの本則市場は第一部と第二部に区分されています。なお、大阪証券取引所は平成25年に東京証券取引所と統合されています。また、新興企業向けの市場として東京証券取引所マザーズと東京証券取引所JASDAQ(旧大阪証券取引所JASDAQ)があります。会社の規模、上場目的、上場基準等を勘案し、どの市場に上場するかを選択する必要があります。
株式上場のための基準を教えてください。
株式上場のためには各証券取引所が定める基準を満たす必要があります。上場基準には形式基準と実質基準があります。
上場審査の形式基準について教えてください。
上場審査の形式基準は各証券取引所ごとに以下のように定められています。
①東京証券取引所
項目 | 内容 |
---|---|
(1)株主数(上場時見込み) | 800人以上 |
(2)流通株式(上場時見込み) |
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(3)時価総額(上場時見込み) | 20億円以上 |
(4)事業継続年数 | 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること |
(5)純資産の額(上場時見込み) | 連結純資産の額が10億円以上(かつ、単体純資産の額が負でないこと) |
(6)利益の額又は時価総額 | 次のa又はbに適合すること
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(7)虚偽記載又は不適正意見等 |
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(8)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
(9)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること
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(10)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること |
(11)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること |
(12)合併等の実施の見込み | 次のa及びbに該当するものでないこと
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(日本取引所グループHPより)
②マザース
項目 | 内容 |
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(1)株主数(上場時見込み) | 200人以上 (上場時までに500単位以上の公募を行うこと) |
(2)流通株式(上場時見込み) |
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(3)時価総額(上場時見込み) | 10億円以上 |
(4)事業継続年数 | 新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること |
(5)虚偽記載又は不適正意見等 |
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(6)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
(7)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること
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(8)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること |
(9)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること |
(日本取引所グループHPより)
③JASDAQ
項目 | 内容 |
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(1)株券等の分布状況(上場時見込み) |
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(2)流通株式時価総額(上場時見込み) | 5億円以上 |
(3)純資産の額(上場時見込み) | 2億円以上 注(1) |
(4)利益の額又は時価総額 | 次のa又はbに適合すること
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(5)虚偽記載又は不適正意見等 |
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(6)上場会社監査事務所による監査 | 上場会社監査事務所の監査を受けていること |
(7)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
(8)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること
|
(9)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること |
(10)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること |
(日本取引所グループHPより)
注1. グロースは「正であること」
上場審査の実質基準について教えてください。
上場審査の実質基準は各証券取引所ごとに以下のように定められています。
①東京証券取引所(本則市場第二部)
項目 | 内容 |
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企業の継続性及び収益性 | 継続的に事業を営み、かつ、安定的な収益基盤を有していること |
企業経営の健全性 | 事業を公正かつ忠実に遂行していること |
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 | コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること |
企業内容等の開示の適正性 | 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること |
(日本取引所グループHPより)
②マザーズ
項目 | 内容 |
---|---|
企業内容、リスク情報等の開示の適切性 | 企業内容、リスク情報等の開示を適切に行うことができる状況にあること |
企業経営の健全性 | 事業を公正かつ忠実に遂行していること |
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 | コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること |
事業計画の合理性 | 相応に合理的な事業計画を策定しており、当該事業計画を遂行するために必要な事業基盤を整備していること又は整備する合理的な見込みのあること |
(日本取引所グループHPより)
③JASDAQ
スタンダード | 内容 |
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(企業の存続性) 事業活動の存続に支障を来す状況にないこと |
(企業の成長可能性) 成長可能性を有していること |
(健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立) 企業規模に応じた企業統治及び内部管理体制が確立し、有効に機能していること |
(成長の段階に応じた健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立) 成長の段階に応じた企業統治及び内部管理体制を確立していること |
(企業行動の信頼性) 市場を混乱させる企業行動を起こす見込みのないこと |
同左 |
(企業内容等の開示の適正性) 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること |
同左 |
その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項 | 同左 |
(日本取引所グループHPより)